Fifth Annual Bicycle Film Festival, 2005
バイシクルフィルムフェスティバルin東京
*開催日*
2006年11月9日(木)〜12日(日)
*場所*
渋谷周辺
*お問い合わせ*
BFF東京事務局
tel:045-262-1357(クリオシティ内)
mail:kenichi@bicyclefilmfestival.com
*BFF公式サイト(英語)*
http://www.bicyclefilmfestival.com

2005年度のポスター
desgined by NAMAIKI
(画像クリックで拡大)
サンフランシスコ レポート
Report  1 | 2

いよいよプログラム1が始まるのだけど、
とてもすべての作品の感想は書ききれないので、
レポートは最も盛り上がったプログラム6に場面を変えます。

プログラム6の1本目はSanFranciscoのメッセンジャー達を撮った“M.A.S.H.
1時間の作品にする予定だが、今回は10分のパイロット版での上映だ。
それすら上映当日まで編集していて、監督したMike Martin自ら劇場に持ってきたのが上映30分前というあわただしさ。
Martinが皆の反応を見ようと僕の横に立っている。
落ち着かないのが真っ暗な中でも伝わってくる。
画面にSanFranciscoの町を走るメッセンジャーのロングショットが映し出された瞬間、会場中が拍手と奇声で満たされた。
サウンドトラックのボーカルとキーボードだけのシンプルなパンクの曲に ドラムが加わり、ベースが加わり、画面にも大勢のメッセンジャーが映し出されるにつれて 皆が段々静かになり、映画に引き込まれていくのがわかる。
そんな中で友達を画面に見つけたメッセンジャー達が、彼の名前を叫んだり、
立ち上がって「あれは俺だよ!」と観客に伝える人もいる。
うわっ。ピストでジャンプしてるよ。逆走?歩道でスキッド?
怒り出す人がいるのではないかと見渡すが、クリティカルマスや自転車NPO関係と見受けられる人達も楽しんでいる。
ええっ!歩行者のオバサンに激突(というか停まりきれず抱きついている)してるぞ。「これはナンボ何でもアカンやろ。」と思うのだが皆は吹き出して笑っている。
日本でのクリティカルマス関係者とメッセンジャーの対立、
環境団体系サイクリストとスポーツサイクリストのお互いへの無関心を知っている僕としては驚きだ。
この関係は、別のプログラムでやった“STILL WE RIDE”というクリティカルマスのドキュメンタリーでも同じだった。
まじめなテーマで熱く語られるインタビューを、見るからにヤンチャなサイクリストが(茶々をいれながらも)真剣に見入っていた。
もちろんSanFranciscoでも、サイクリスト同士の主義・主張の温度差は、現実には多かれ少なかれ存在しているのだが、映画を通すことで、少なくともこの場では、お互い楽しみを共有しているのだ。
これが映画の力なんだなぁ。

話がそれてしまった。
“M.A.S.H.”が拍手に包まれて終わると、ドイツのバイシクルフィギュア(自転車ダンス)の“INES BRUN”。
衣装と音楽のセンスに失笑がもれるが、決め技(前後逆に自転車にまたがり、ウィリーでフロントホイールを延々とフリップする!)が出たときは一斉に拍手と口笛。
続くチャンクバイク(自作の大改造自転車)のミーティングの様子を収めた“BIKE KILL”も自転車砲丸投げの喧嘩のシーンで大笑い。joust(馬上槍試合)で大爆笑。
このあともブラジルのフリースタイル、自転車カラオケ、バイクポロ、Flashアニメ等 あらゆるジャンルの短編が続くのですが、長くなるので皆積極的に楽しんでいたとだけ言っとこう。
メッセンジャービデオの定番Lucas Brunelle作品のあとやっと“MSGR-Holic”だ。
僕達、京都メッセンジャーKAZEが主催する、Kyoto LOCOというイベントを映像化した作品だ。
本来45分の作品を、字幕が苦手なアメリカの観客向けに16分に編集してあるのだが、 それでも最初のレースや技の解説部分では客席がシーンとしてしまう。
「あれ、滑ったかな?」と思い始めたころ車載カメラの映像が始まり、"Yeah!"と歓声があがる。ほっと胸をなでおろす。
" Squid!"、"Go,Timmy!"と友人を見つけては大声をあげる人達がいる。
" KyotoLOCO!"と叫んだ人もいた。
少し照れくさく、とても嬉しい。
確かに字幕はハンデだけど、自転車というキーワードがあれば異文化の壁なんてここにいる人達は軽々乗り越えてしまうんだろうな。と、羨ましかった。
もちろん最後は大拍手。あぁ良かった。


最後の“BOMB BAY”で、ノーブレーキでフリーの自転車を乗りこなすTed Shredに ビックリしながらも笑わせてもらった。
(ちなみにBombとは、スケートボードのスラングで「下り坂を攻める」と言う意味)
ひときわ大きな拍手が鳴りやまないうちに、明かりが灯りプログラムは終わった。
皆の満足した顔。
まだお腹いっぱいでは無いけど、美味しかった。そんな感じの顔。
映画ももちろん面白かったけど、
僕は、この人達の顔を見に遥々SanFranciscoまで来たんだな。

「おい、タクヤ。そろそろ仕事してくれよ。入れ替えが始まるから」
忘れてたよ。仕事をしにSanFranciscoに来たんだった。
「はい!お帰りのドアはこちらでーす」「次の入場はまだですよー。押さないで」
…って違うやん。こんな仕事をするためにSanFranciscoに来たわけじゃないやん。
心の中でひとりぼけつっこみをしつつドアの所で誘導していると、帰る人達がいろいろと声を掛けてくる。
「楽しかったよ。BFFやってくれてDomoArigato」
「次はいつやるの?来年かい。絶対またくるよ」
「MSGR-Holicは君が撮ったの?え、違うって。何にしろ最高だったよ」
「日本でもBFFやるんだって?行けたら行くよ」(ほんまかい?)

「すいません。まだ入場できませんよ」
と、出て行く人の波に逆行して入ってくる人に声をかけたら、劇場の経営者の人だった。
「帰っていく人を見ようと外に出てたんだ。こんなに皆が楽しそうに帰っていく映画は久しぶりだよ。来年は劇場の前でゆっくり話したり、自転車で遊んだりできるように、道路を封鎖するよう市にかけあってみるよ」
いい街だな、ここは。それともサイクリストという人種が特別なのかな。

最後の日、最後のプログラムが終わったあと、疲れきったBrendtと二人でメキシカンビール(*4)を飲んで、Burritoを食べた。
「これだけ大勢の人が来たって、BFFは映画祭としては一番小さい部類に入るんだ。でもな、来る人が本当に楽しめる映画祭としては、世界でもトップクラスだと思うよ」

さあ、日本のBFFもあと一月。どんな人達が見に来てくれるんだろう。

*1)BFF東京事務局のスタッフ
*2)ソフトな小麦粉のトルティーヤでひき肉やチーズ、豆などをくるんだメキシカンフード。メキシカンといっても本場はサンフランシスコ。SFは昔メキシコ領だった。
*3)スーパーべジは、メキシカンライス、サルサ、ワカモレ、(アボカドペースト)ビーンズ(ブラックビーンズが美味い)、サワークリーム、レタスが入っている。アボカド、コリアンダーが入っている場合もある。SFのMissionエリアの16th.St.×Valenciaにある"Pancho Villa" が特に美味しいと思う。
レストランで食べる場合もTake-outでオーダーして、アルミフォイルに包まれた状態でかじりつくのが通。
*4)メキシコのビールというと「Coronaにライム」が有名だけど、メキシコ人に言わせると「あれはお昼に飲む軽いビール」。実はもっと美味いのがいっぱいある。 XX(ドスエキス)、Tecate(ヘカテ)、NegraModelo(ネグラモデロ)等など。なかでも評判が良いのがBohemia(ボヘミア)。

*タクヤ プロフィール*
京都在住。
自転車ショップ勤務、メッセンジャー、クリティカルマスの呼びかけ、
自転車パーツメーカーで品質管理、メカニック、etc. 
「自転車文化で人をつなぐ」仲介人。
どこにも属していなくてどこにでも属している37歳。
自転車文化への造詣の深さはもちろんのこと、
サンフランシスコのアートスクール在校時に培われた語学力と土地勘、
アメリカ人のわがままにも余裕で対応できる懐の深さから、今回の特派員に。

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BFF東京へのコメント
"厳選された珠玉の19本。サイクルカルチャーを堪能"
FORM
"メッセンジャーのスタイルが一つのカルチャーとして注目されている"
HUgE
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映画監督・評論家
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