時間が経っちゃいましたが、、、ちょっとした連載読みものです。
Vol.1 「出発ドタバタ編」
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Iggy(イギー)は随分と日焼けしていて、愛嬌たっぷりのメキシカンだった。
胸板も厚く、筋肉隆々だ。
以前はムエタイの選手だったそうで、ケガで選手生活を断念しメッセンジャーの道に入ったそうだ。
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Iggy「LAへようこそ!ちょうど今BFFが開催中で、みんな映画館に集まってる。
午後からライディングイベントもあるから、荷物を置いたら行こうぜ!」
Ken「BFFって、Bicycle Film Festivalのこと?」
I「そうだよ。ケンは知ってるか? 俺はBFFの運営も手伝っているんだ。
色んな自転車の映画を見たり、ライディングも、アートショーもあったりするんだ。
日本でもやってるか?」
驚いた。
まさかBFFの日と重なってたなんて。その日はLabor dayで祝日だった。
しかも、メッセンジャーのIggyもBFFのスタッフをしていた。
盛り上がって来たなー!!
K「BFFなら東京でもやってるよ。自分もBFF東京スタッフの一人で、
日本語の字幕付けなどを手伝ってる。
実は、自分も関係している映像作品がエントリーされてるから、
LAのプログラムにも入ってるかも。」
I「え、マジで? どんな作品?」
K「Bicycle Parts Butterflyっていうタイトルで、自転車パーツのからくり装置のやつ」
2009年の濱バイクの時にクリオシティのメッセンジャーたちが中心となって挑戦し、計画から作品完成までに11ヶ月を要したドキュメンタリー映像だ。
I「あ、それ確かさっきやってたぞ。けっこう拍手が起こってた。
なんだ、知ってるも何も、既にエントリーしてるんじゃないか。
すげーな。会えて嬉しいよ。」
K「こちらこそ、見てもらえて嬉しいよ。」
彼の部屋に荷物を置いて、さっそく上映会場へ。
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BFF東京には2005年から6年間も関わってきているというのに、
実は海外のBFFには一度も来たことがなかったので、とても新鮮だった。
(2011年のBFFは、先週NYの開催が終わったところで、東京開催は 8月26日?28日に
青山で行われる予定だ。)
会場は既に8割方の席が埋まっていて、一番上の端あたりにIggyと座った。
さすがアメリカで、始まる前からまったく騒々しい。
やっぱりこの空気感が最高なんだよなぁ。自転車好きで集まってさ。
少しすると、主宰のブレント・バーバーが登場。
東京でやる時より挨拶も饒舌だ。
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まさか自分が会場にいるとは思ってもいないだろうな。
なんか潜入調査みたいで楽しい。
それにしても観客のテンションがすごい。
のっけからヒートアップしていて、まるで動物園のよう。これぞBFFだ。
国民性の違いもあるだろうが、東京もこうでありたい。
BFFは、大人しく見るようなものではない。
作品の力で見入ってしまうのは良いとしても、基本的には突っ込みを入れたり、
笑うところでは爆笑したり、知ってる人が出てくればそれを野次ったり。
そういう空気感がBFFの持つ魅力だ。だからこそ行きたくなる。
半分は作品見たさ、もう半分は楽しい雰囲気を共有したいから、というのが
正しいBFFの楽しみ方なんだと思う。
トレーラーが流れたあと、最初の作品が始まった。
だが、12時間近いフライトの後だったので、10分も掛からず寝入ってしまった。
拍手で気付くと、会場はもう明るかった。
残念!
その後、向かいの広場ではBMXやピストのトリックイベントなどが行われていた。
すごい数の人が集まっていたが、今のような自転車熱がLAで本格的に始まったのは
去年(09年)くらいからだという。
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その広場の一角でブレントに再会。
「なんてこったい!なぜお前がここにいるんだ!」と、とても驚いていて面白かった。
その夜は、上映会場の屋上にてアフターパーティー。
LAの自転車コミュニティは、老若男女、色んな人が混ざり合っていて、
みんな知り合いのようで素敵だった。
メッセンジャーも数多く来ていて、出身が地元アメリカの他、エルサルバドル、
メキシコ、ベネズエラ、グアテマラ、そして日本と、
「随分ワールドワイドだなあ!」なんて話で盛り上がったり。
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そこでイギーから興味深い話を聞いた。
LAでは、自転車コミュニティの繋がりで毎週水曜夜に集まり、
ダウンタウンのホームレスたちにブリトーを配る、という活動をしているという。
その活動は街のいろんな人たちからの協力もあり、レストランが食材を、
自転車ショップがその活動費用を、コーヒーショップもカンパで支えてくれ、
少ない時で8人、多い時は50人以上のボランティアが集まって300個のブリトーを作り、
メッセンジャーバッグをパンパンにして届けているんだとか。
I 「確かに作れるブリトーの数も増えてきたけど、いつも配り終えた時は
もっと作ってくれば良かったと、後悔するのさ。
これで十分なんて思えたことは一度もない」と。
活動は今年で丸5年になり、イギーはその最初から参加しているという。
I「始めた頃は、ブリトーを渡しても警戒する人がけっこういたけど、
今では毎週水曜を楽しみにしている人がたくさんいるんだ。」
実は、その活動を紹介した「 Hunger In The City 」というドキュメンタリー作品が
2006年のBFF東京でも上映され、当時自分はそれを見てすごく感銘を受けていた。
まさか、Iggyがその作品に出ていたとは!
K 「それを聞けて、すっごく感動した!
『Hunger in the city』に出ていたメンバーに会えるなんて。
こちらこそ光栄だよ!」
すごく嬉しかったし、活動について色々と聞かせてもらえた。
( 続く )