ひのりごと 11

ポツ…ボツ、ボツ、ポツ…。

すっぽり被ったカッパのフードに、雨が当たる音が聞こえます。

今日は春の嵐。
灰色の空の下、正面から思い切り吹き付ける雨と、その中に紛れる桜の花びらが綺麗でした。

被ったフードで少し狭まる視界と、少しだけ遮られる風の音。
雨が降るとこのフードの中の、いつもより少し静かな空間で、あれこれ考えます。
晴れていても、走りながらいつもあれこれ考えるのだけど、少し集中して落ち着いた気持ちで、アレコレと。

そして、必ず思い出す人がいます。

雑に伸びたボサボサの金髪。歯は抜けて、いつも同じワークキャップを被った、イギリスのどこかのメッセンジャー。
彼とは何年も前のイベントで出会いました。
お互いの国の仕事の話しをしていた時に、雨の日の話になりました。
彼は雨が好きだと言います。
「雨の日は、街を歩く人が少なくなるから走りやすくて楽。」なのだそうです。
「ふーん、なんでも気の持ちようだなー。」
と、経験浅き日の私は単純にも感化されました。

以来、雨が降る度に彼を思い出します。
未だにその言葉に特別以上の特別な思いがある訳でもないけれど、なんとなく頭の中に浮かぶのです。

さて、今日の雨は15時頃まで降り続きました。

冷えた体を、人形町の「柳家」の焼きたての鯛焼きで温めました。パリっと香ばしい皮が大好きです。

いつも大行列で、なかなか買えない柳屋さん。しかしこの嵐の中に買いに来る人はさすがに少ない様で、今日はあっさり買えました。

うん、確かに。
彼の言葉がまた頭に浮かびました。

image