ひのりごと 9

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一日で一番手に触れているもの。

ハンドル。

そのハンドルには、もう何年もコットンのバーテープ(ハンドルに巻いてグリップを高めるもの)を使用しています。

使い続けると少しずつ布地が擦れて薄くなり、日光や雨にさらされて色褪せていくのが土臭くて好きです。

また、革やビニールとは違って、固くて優しくない感触がぎゅっと気持ちを引き締めてくれます。

しかし、いい味を出してくれるこのバーテープも使い過ぎると、

壁に立てかけたり、倒れて地面と接触したりを繰り返し、破けてほどけてボロボロに。

自転車自体のズタボロ感を急速に高めてくれます。

そんなボロボロになったバーテープを、去年交換してもらいました。

力強く、均等に巻かれたバーテープは握り心地だけでなく、美しい見た目からも走る気持ちを高めてくれます。

交換してくれたのは元メッセンジャーのノッチ。

そのノッチがお店を始めました。

「自転車の修理やメンテナンスを中心としたメカニックショップ。」

名前は「EFFECT」。

EFFECT…効果、影響、作用、出来映え、手答え

交換して一年近く経ってもよれることなくしっかり巻かれたバーテープ。

とても地味なパーツですが、直に握る手のひらに、そして毎日の仕事に確実に心地よさを与えてくれています。

生活する中で欲しいものはたくさんあっても、実際手に入れて使用できるものはわずかなもの。

ならば、自分にとってEFFCTIVEな物や人を大事に選びたいと思います。

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EFFECT

東京都世田谷区大原1-63-4

 

ひのりごと 8

私の周りで、美味しいと評判のカップラーメン。
鶏と塩の透き通るスープ。具は柚子風味の鶏団子のみという潔さに惹かれ…。(パッケージを見ただけ。)
しかも、スーパーやコンビニで中々手に入らないとなると、余計に想像は膨らみ…。

amazonでポチッ。

届きました。
1月の、あの大雪の日に。
雪が全身にまとわりついたままの宅急便の方が、うつむき気味に段ボールを抱えてやってきました。
はっ!
ケース買いしたので段ボールにはデカデカと商品名が。
あ、、すみません。
「今」じゃなくてもいい、こんなものの為に、よりによってこんな日に。
あぁすみません…。
同業者故の余計な同情。

普段、
「なんで雨や雪の日にこんなものを運ばないといけないのか。」
なんて事は一切思いませんが、届けられる側になると慮ってしまいます。

そして昨日も、みぞれ混じりの雨の一日でした。
iPhone操作の為に、先を切り落とした手袋から覗く指は早々に限界を迎え、冷たく濡れたサドルに座るのが嫌で終始立ち漕ぎ。雪の結晶が顔にチクチクとささり、痛みで正面を向く事ができず。
あの日の配送員の事もチラチラと浮かびます。
家に着くとドッと疲れが出ました。

しかし一夜明ければ、
雪負けして赤らんだ頬を鏡で見て、「おぉ…、頑張った風の顔。」と、ちょっと誇らしげに思う自分。
(世界のメッセンジャーはナルシストな性分で成り立ってます。多分。)

あの配送員も同じ心持ちなのだろうか。

季節柄、冷たい雨の話が続きましたが、今日は快晴。
湿った自転車、靴、メッセンジャーバックが段々と乾いていくのに気持ちよさを感じながら今日も走ります。
(爽やか~)

ひのりごと 7


赤いパタゴニアの古着のジャケット。もう9年近く着ています。
なぜ購入した年月を覚えているかというと、この仕事を始めてすぐに買ったからです。
雨の日用に…。
ナイロン100%ではあるけれど、止水加工もなく、古着故に撥水性もないこのジャケットをどうして雨の日用に購入してしまったかというと、雨の日に一日中走り続けるとどれくらい濡れるかが分からなかったからです。
今でもお客様や友人に、「雨の日はどうしているの?」とよく聞かれますが、当時の私も同じ様に知りませんでした。
そして、ある冬の寒い日に初めての雨の日を迎えます。
結果はずぶ濡れ。
雨はジャケットを通り抜け、着ているもの全てを濡らし、大手町で遭難寸前になりました。大げさではなく。
耐え忍ぶ様に何とか業務を終え、その足でレインコートを買いに行きました。
そこでまた、値段に驚愕します。レインコートが数万…。レインコートが数万!

ある程度の想像と想定は大切だけど、やってみないと分からない事がほとんどです。
そして、「分かった事」については、ある程度の想定と準備ができます。心の準備も。

とても心配性で気の小さい私ですが、こうしてメッセンジャーを続けてきました。

そろそろ新しい事に挑戦してみようと近頃ドキドキしているのですが、「やってみてよかった。」というメッセンジャーでの実感を生かして、勇気を持って一歩踏み込んでみようと思っている今日この頃です。

ひのりごと 6

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スカイツリーができて少しづつ荒廃していく東京タワー周辺。
というのは冗談ですが、
これは虎ノ門にある空き地の写真です。
空き地ができると、短期間でもコインパーキーングになる都会では珍しく、広大な敷地がそのままになっています。
今、虎ノ門エリアは新道路の大きな工事、新しいビルの建設が続いています。
私がメッセンジャーを始めた頃は六本木ヒルズが出来たばかりで、ミッドタウンは建設中でした。
そして最近では日本橋、京橋エリアの再開発も盛んです。
大きな交差点の四つ角が段々と取り壊され、新しいビルに生まれ変わっていきます。
最初は、「あっ!あのビルなくなったな。。」と、思うも徐々にその景色に慣れ、何も感じなくなった頃に新しいビルが完成します。
経年劣化やセキュリティー事情から新陳代謝がエンドレスに必要なのでしょう。
再開発で新しい人の流れができることも、風通しの良いことだと思います。
一方で、通る度に何とも言えない気持ちになるビルがあります。

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数年前まで、とある銀行の本店だったビルです。
かつてはメッセンジャーが頻繁に出入りし、一階には大手コーヒーチェーンが入り、人が活発に動いていた場所です。
その銀行が移転してからは、二十数階まであるビルが廃墟になり、今もそのままになっています。
まわりの植え込みは雑に伸び、立派なガラス張りのビルに人が誰もいない光景は少し怖さも感じます。
さらにそれを引き立てる様に、今年に入り隣に大きなビルが完成し大企業が入居しました。
この光景を見ていると現実的だけど非現実な漫画を見ているような気持ちになるのです。
でもこれは現実です。
入居者がいなくなり、買い手もつかなければ大きな廃棄物の塊の様になるビル。
街を眺める者として街が活発に新陳代謝していくことを願います。
今日は真面目なひとりごとでした。

ひのりごと 5

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ある日、ある時、
どうしても肉が食べたくなりました。
生姜焼き、牛丼、ステーキ、、色々と思い浮かんだ中ですぐに「とんかつ」に思いが定まりました。
「短時間で食べられて、安くて、おいしそうなところ。しかも今いる場所からすぐ行けるところ。」
頭の中にある、仕事中に見かけたお店のリストの中からすぐに絞り出し、とあるお店に決めました。
早速店へ行き、外で食券を購入して中へ入ると、お昼休みに入る直前の為か、店内の客はカウンターに数名が座る程度でした。
私は一番奥のカウンターに案内され、食券を渡すとすぐに白いご飯が渡されて、揚げたてのとんかつがでてきました。
時間もない為、黙々と念願のとんかつを食べていると、次から次へとお昼休みに入ったサラリーマンが入ってきます。
入ってきた瞬間に食券を渡す間もなく、「ヒレ1枚、ロース2枚!」「ヒレ1、ロース2、ミックス1!」と声が上がります。
なるほど。食券が外で買われると自動的に店内に伝わるシステムの様です。
「だから私の注文も早く処理されたのか。」と、納得しながらとんかつ、白飯、キャベツの順で黙々と食べ続けました。
最後の方はおなかいっぱいでしたが、ごはんを残すのが苦手なのでとんかつとごはんの調子をしっかり合わせてキャベツできれいに終わりを迎えました。
お皿をカウンターに整え、「ごちそうさまでした。」と、立ち上がり出口に行くと半開きの戸の前にたっている、お店のおじいさんが「ロース2!」と叫びます。
そう、オートシステムのメニュー伝達ではなくお店のおじいさんが客の購入する食券を黙視し、それを都度中へ伝えていたのでした。
ぱっと店内を見渡せばすぐに気がつく事でしたが、あまりにもとんかつに夢中で気がつきませんでした。
そんなこと、仕事をしているとたくさんあります。
思い込み。
何年も呼び続けていたビル名が微妙に間違っていた。
あれは鳩じゃなくてタオルって思うと鳩。
あれはタオルと見せかけて鳩だから絶対に驚かないと思うとタオル。
見ている少しの現実から、頭の中で勝手に広がる想像は無限大です。
だからこそ、たまにふと立ち止まって今自分がいる場所はどんなところなのか、何があるのかを見てみることも大切です。
意外と景色や街は思い描いていたものと微妙に違っている、もしくは変わっているかもしれません。
今日は完全にひとりごと。
それにしても、おじいさんの黙視力、すごいです。

ひのりごと 4

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最近楽しみにしている事があります。
それは、仕事終わりに行く銭湯です。しかも週末の夜、旅に出る前の銭湯です。
といっても、まだ二回しか経験していないのですが…。
走って汗だくの体でバックパックを背負って向かうのは、オフィス街から住宅街へと変わって行く中間地点の様な場所にある銭湯です。周りにはオフィスビルも、お惣菜屋さんのような商店も、植木が並ぶ路地裏もあります。
今年の春、夜の船で大島へ向かう前に行った時、
女湯の御婦人達が程よい距離感で、でもお互いを気遣いながら楽しそうに会話しているのが印象的でした。
そして先日も、青森へ夜の新幹線で向かう前に一風呂浴びに行きました。
前回程混んでいない脱衣所。後から入って来た婦人がお風呂上がりの婦人に話しかけました。
「前もこの時間に来たけどあまり混んでないわね。」
「そうね、あっち(近隣の違う銭湯)はこの時間結構人がいるんだけどね。もう少し後の方が混んでるわよ。」
着替えながらもう一人が答えました。
うろ覚えですがこんな会話だったと思います。
すると、
「そうなのね。じゃあ今度は時間をずらして来てみよう。」
と、最初に話しかけた婦人が言いました。
ここで私は、はっとしました。
私は旅前で少し焦る気持ちもあり、空いていて良かったと思っていたのですが、
来ている方の中にはお風呂と同じ位会話を楽しみにしている人もいるんだと気がつきました。
なんだかいいなと思いながら、私も汗を流して熱い湯船に浸かりました。
そしてまた脱衣所で着替えていると、私の大きなバックパックに気づいたある婦人が、
「どこかに行くの?」と、訪ねてきました。
これから青森にねぶたを見に行く事を伝えると、周りの方も反応し、今度は私がみなさんの会話の中心となりました。
「へー!いいわねー!」、「楽しんでね!」と、次々と声をかけて下さいます。
その連鎖が脱衣所に人が入ってくる度に伝わり、最終的にみなさんに見送られる形で脱衣所を後にしました。
この後いい気分のまま新幹線の中で飲んだ缶ビールが最高に美味しかったです…。
仕事から離れているような話しですが、数回の「ひのりごと」で書いてきたように、街を走るようになってから地域性を強く意識するようになりました。
同じ東京の中にも様々な場所があります。街の風景の中に色々な人がいて、その街の人が色々な風景を作っています。それが植木鉢が並ぶ様子に表れたり、銭湯での会話になったりしているのだと思います。
私はそれを実際に自分の目で見て触れて、どんな人がいてどんな街なのかを知ること、感じること自体を楽しんでいます。
秋も冬もまた、この銭湯からいい旅ができればいいなと思います。

ひのりごと 3

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お盆休みに入りました。
普段走っているオフィス街は人も車も少なくなってとても静かです。
山に行った時に感じる静けさとは違って、通常あるはずのものがない、引き算で生まれる静けさは少し変な感じがします。
車が走る音、人の喧噪に脳が慣れすぎているからでしょうか。疲れていると「それ」をうるさいと思うこともありますが、無いと少しさびしく感じます。
この、街の少しさびしい感じが私にとってのお盆、そしてお正月のイメージです。
実家が東京の為、帰省という概念があまりありません。帰省する人にとっては地元の友達と久しぶりに会ったりと賑やかなイメージなのでしょうか。
こうして静かなオフィス街で、毎年少しさびしくなって、休みを取れば良かったと思うも、中途半端に休めない貧乏性です。

ひのりごと 2

たむろする若者。
叫ぶ若者。
割れた空き瓶。
「マックチキン」すら伝わらない(伝えられなかった)やたら賑わう深夜のマクドナルド。
じろじろ見られる自転車に乗った日本人。
4年前に訪れたパリの20区、夏の夜の光景です。
「パリならどこでもパリ」と思って出発前に予約したユースホステルはパリのはじっこにありました。
心配性なのに安易な性格です。
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滞在中毎日ここを出発して中華街を抜け、人種が少しずつ変わるのを感じながら中心へと向かいました。帰りは反対に少しずつ華やかさが薄れていくのを感じながら宿に戻ります。
これが自転車の旅の良さでした。
イメージしていた華やかでお洒落なパリ、予想外なパリ、どちらもまるごと味わいました。
地下鉄で移動して目的地だけ見ていたら、安易な私はきっとそれがパリだと思っていたはずです。
途中経過があるからこそ目的地のその街での立ち位置や意味を感じられました。
この事は日々の仕事中にも感じています。
渋谷や丸の内、銀座があって八丁堀や月島がある。
そして街と街の間にも街があって…、どんな繁華街も少し行けば人が普通に暮らしている場所がる。
当たり前のことですがメッセンジャーを始めるまでそんな事を大まかにとらえていた気がします。
西麻布や六本木に人が住み八百屋があって、なんていうイメージがありませんでした。
「東京を中心もはじっこも一つ一つ自分の目で見られる。」
メッセンジャーをやって良かったことであり、面白いと思ったことの一つです。

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ひのりごと 1

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上は上野の不忍池。
下は週末に訪れた青森。
たくさんのビル、お店、家、車、様々なものが入り交じった東京。ビルからビルへ移動する間にたくさんの情報が頭に入ってきます。そんな景色を抜けて見た蓮の花。
四方を山に囲まれた中を移動して見た青森の蓮の花。
どちらもとても奇麗でした。
でも、見え方は違います。
どちらが良いかという訳ではないけど、景色に突然ギャップの生まれる東京が好きです。
メッセンジャーの仕事はアップダウンの繰り返しです。
長雨の後の晴れ。
過酷な天候の中でお客様から頂く嬉しい小さな一言。
午後から突然軽くなる足。
単調な景色の後に現れる、「いいなー!」と思わせる景色や瞬間。
そんなことを繰り返して8年近く走りながら考えてきたことをここに書いてみようと思います。
ビルとビルの間に思うこと、好きなこと、もの。
NORI(クリオシティ東京支社担当)。
4年振りにこのブログに登場しました。前回はとても奇麗にフェイドアウトしたので今回は自分らしく思うままに細く長く続けて行きたいと思います。

ECMC2008 paris4日目その二

ひたすらまっすぐ
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バンクまでの20kmのグループライドの始まりです。
正直なところプログラムを見たとき参加を迷いました。長旅で疲れてる体で20km、往復40kmか。メッセンジャーだからってそんなに毎日走りたい訳じゃありません。
そしてまたまたアバウトで距離間のつかめない地図。
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左下の円がパリの街で右上の円が目的地。
でも参加して良かった!!
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本当に天気も良いし、パリ中心部とはまた違う穏やかな道をとにかくまっすぐ進む。途中気の向いた時に休憩。
レースとは違い並んだ人としゃべりながらゆっくりと。
数十人で走るのでたまに車を渋滞させてしまうが大半の運転手はイライラする事無く歓迎の意味をこめて笑顔でクラクション。
道行くおばさんは後から後から現れるメッセンジャーの集団に驚いた顔。
庭のイスでくつろぐおじいさんは大きな拍手で応援。
サッカーをする少年もボールを止めて遠くから手を振ってくれる。
温かい光景に、じわーっと温かい充実感でいっぱいになりました。
そして到着。
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まずは軽く腹ごしらえ。サポートカーに積まれてきたランチが配られる。コーラにサラミ、クスクス。フリーです。
おなかいっぱいになったら、バンクでレース開始。
走らない私は観客席で観戦しながら、持ってきたTシャツやジャージの交換にいそしみます。
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ロンドンのメッセンジャーダルフィーナ。彼氏が京都ロコに参加した事がある!とうれしそうに話してくれた。
そしてまた長くて楽しい道を走り街へと戻る。
夜はいよいよイベントのプライズです。
つづく。