今週はいつも以上に睡眠不足だったが、蒸し暑くてなかなか寝つけず、意味なくフラフラ歩いてみたり時刻表を調べたりした。
何よりも、蒸れたパンツが気持ち悪かった。
昭和の名作漫画、男おいどんと自分が重なった。
それでも深夜、身体中ガリガリ掻きむしりながらもだんだんまどろみ落ちていく。
虫に刺されて全身が山岳賞模様になっていくのを感じながら…。
7/6(土)
5時ごろ目が覚めた。三時間くらいは眠れた様だ。
始発まではあと一時間ほどあり、まだ夜も明けていない。
こんなところでうだうだしていたくないし、ちょっとでも走って目を覚ますか!
これが更にやらかしちゃうことになるとしてもいい、少しでも前に進もうと決めた。
坂をくねくね登り、135号線に出た。
朝もやの温泉街を見下ろす眺めは、とても幻想的だった。荒廃した近未来都市のように見えた。
ある作家が「初めてモナコに行った時、熱海に似ているなと思った。」と言っていたのを思い出した。
さあ新しい一日が始まる。気持ちもリセットしていこう。
数時間前にはハラワタ煮えくり返った町だったが、今はこう言おう。
アリガトウ、熱川。
また来るぜ、今日。
第3ステージのゴール地点であるコンビニを通り過ぎ、第4ステージは135号線をひたすら北上するだけだ。
河津から熱川までも結構アップダウンがあったが、ここから先の海岸線も平坦ではない。ギア比はフリーで2.8ぐらいがいいかな?
まだこりずに作戦を考えていた。
夜が明けてきた。
朝焼けと夕焼けの時間帯を「マジックアワー」とよぶと聞いたことがある。
漁師町を照らす朝焼けはすごくきれいだった。
この風景に出くわせただけでも、
昨日から前乗りして良かった、
一人だけのツール・ド・東伊豆はこの為にあったんだ……!
と思えた。
走りながら、無意識に「きみだけのマジックアワー」という歌が口をついて出た。
♪じょうずに出来るかってことじゃな~~い
「ぼくだけのマジックアワー」
じょうずに出来なかったが、もうすでに愉しいレースになった。
当日の集合時間は熱海駅に朝8:00。
レースというものは、スタートする時にはすでに勝負がついているものなのかもしれない。
もし熱海駅前に布団が敷いてあったら、横になって5秒で眠れるだろう。誰が一番早く眠れるか競争だったら優勝する自信がある。
シュワシュワの頭でそんなことを考えた。
伊東駅にフラフラとたどり着いたのが7:00。
熱海まではあと21キロほどあるようだ。一時間で走るにはちょうどいい距離だ。普通のコンディションなら(苦笑)。
そして電車だとあと5駅。
僕は駅のベンチでタオルを乾かしながら、缶ジュースをたてつづけに3本ぐいっと飲み干した。
朝日を横から浴びて、ミドリビンカがギラリと輝いていた。
僕のツール・ド・東伊豆はここで終わった。