Courio-City 公式ブログ

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正月のイベントは今年もコレ(デザイン部から)

自転車ネタよりも先に、ハイカロリイオトメからのお知らせです。

1月4日から23日まで、ラフォーレ原宿 2Fにて、

「着物 IN LAFORET」やってます。

また、ちょうど今 ラフォーレの正面エントランスの

ショーウィンドウディスプレイでは、

ハイカロリイオトメの着物がメインで飾られています。

近くにお越しの際は、ヘテロフォニーブースへお立ち寄りください。

カーゴバイクレース やります

久々のイベント開催。

カーゴバイクレースをやります。

9/23(日)、11時~12時@関内・日本大通

横浜カーフリーデーのイベント内で行いますので、小規模&エキシビジョンレースになりますが、日頃から乗り慣れている人たち10人ほどで競いますので、面白くなるんじゃないでしょうか。

ちなみに、昨日今日で運んでもらう予定の荷物を集めてますが、「そんなに運ぶの!?」と思われるくらいの物量になると画的に面白そうですね。
初開催となるレースなので、さぁどうなるか。

楽しんでいきましょう。

2018横浜カーフリーデーpdf

 

11/29(Wed)は、PEDAL OUT YOKOHAMA (step05)

イベントの告知、半年ぶりの開催です。
11/29水の夜は、横浜西口鶴屋町、GrassRootsへGO!
皆様も、積極的に楽しんでいきましょ~! ^^

(サイトからの引用)
横浜の街と街を行き交う自転車乗りが音楽やアート、カルチャーを通して繋がるローカルコミュニティイベント「PEDAL OUT YOKOHAMA
LIVE GUESTに横浜を拠点にする二組、カズキクチDJ SICKとSTRAWを迎え、SHOPはBMX RiderのNAO YOSHIDAによる手書きポストカード、横浜発メッセンジャーによるドメスティックブランドSIDE BOYZ、VJにはいつものmmfilmsが彩りを加えます!GrassrootsのGood Food&Drinkと自転車談義で2017年の忘年会にしましょう!

フードデリバリーサービスと紹介記事のお知らせ

※ 弊社に関するニュースが出ていたため、 jiji.comのニュースページを抜粋紹介させて頂きます。

http://www.jiji.com/jc/article?k=000000006.000017102&g=prt

 

「厳選レストランの出来たて料理デリバリー“NEW PORT” 横浜を代表するメッセンジャー会社“クリオシティ”との包括的業務提携を結ぶ」

[スカイファーム株式会社]

和・洋・エスニックと幅広いジャンルの出来たて料理をより迅速に届けることが可能に!

オンデマンドフードデリバリー「NEW PORT」の運営会社であるスカイファーム株式会社(本社:神奈川県三浦市、代表取締役:木村拓也)は、横浜を代表するメッセンジャー会社である有限会社クリオシティ (本社:神奈川県横浜市、代表取締役:柳川健一)と横浜における中心区域のマイクロ物流をより活性化させるべく、包括的業務提携を結んだことを発表致しました。


2016年1月より横浜・みなとみらい地区からデリバリー事業を開始し、会議、イベント、勉強会、ランチミーティング、ケータリングの利用だけでなく、宅配型の社員食堂としても厳選されたレストランの出来たて料理を宅配して参りましたが、急増するオーダー数に対応すべく、オンデマンド物流の先駆者であるクリオシティと業務を提携いたします。スカイファーム代表取締役の木村いわく「今回の包括的業務提携により、急増する料理の注文に対応できるだけでなく、食材や生活雑貨など、より広範囲にわたる商品のデリバリーも視野に入れることができた」としています。クリオシティ代表取締役の柳川氏も「新たな需要喚起にも結び付き、IoTの広がりとメッセンジャーの親和性も確かめられ、意義深い」と両社にとってプラスに働いています。これからも2社ともにデリバリー事業をとおして横浜を盛り上げ、この地域にとってなくてはならないサービスを目指します。

◆NEW PORT
https://newport.stores.jp/

◆クリオシティ
http://www.courio-city.com/

NEW PORTとは?
横浜にある素敵なレストランのお食事をテイクアウト宅配するサービス。会議、イベント、勉強会、ミーティング、ケータリングだけでなく、宅配型の社員食堂のようにもお使いいただけます。また飲食店にとっては、おいしいけれど立地が悪く集客に困っている、店内が狭いため本来の厨房キャパシティ以下の来客しか対応できないという課題を解決します。
スタッフが実際に街を歩きながらリサーチし、独自の掲載基準にかなうレストランだけをピックアップし掲載しています。
「あなた」と「素敵なレストラン」を魅力的な街「横浜」で繋げてゆく地域活性化コミュニケーションツール、それがニューポートです。
https://newport.stores.jp/

Nostalgic 2009 のお知らせ

2009年に開催されましたメッセンジャー世界選手権 東京大会の映像を
大スクリーンで見ながら楽しもうというイベントが間もなく開催されます。

ただ昔を懐かしむだけでなく、これからのメッセンジャー業界をどのように進めていったら良いのか、
そのヒントが当時にあるのではないか?など、見る人それぞれの感じ方で楽しんでもらえたらと思います。

2/5日 18時~21時 @六本木 スーパーデラックス (東京都港区西麻布3-1-25 B1F)
スクリーン3発打つので、皆でゆるく楽しみましょう。
それにしても7-8年とは時間掛かりましたね。笑

プロモーション用映像はこちら (18s)

nostalgic 2009 PV

猫の仮面を付けて集まりませんか~

12/2金 19時~ @新宿のルミネゼロにて猫愛家たちの交流イベント
CAT面舞踏会」(きゃめんぶとうかい)があります。

cataball_01

それのメインビジュアルとキャラクターデザインを、クリオシティのデザイン事業部が担当しています。(ハイカロさん、頑張ってますね)

この最高に面白そうな企画、興味を持った猫好きなあなたは是非参加してみて下さいニャー。

詳しくは、FASHION PRESSでも取り上げて頂いていますので、check it.

PEDAL OUT YOKOHAMA -step02-

pedalout2flyer

go out, chill out, paddle out, “PEDAL OUT”!
ということで、街と人と自転車をテーマに交流を目的とした横浜ローカルコミュニティイベント。
この度2回目。
場所は横浜西口、鶴屋町。
企画してくれた皆さん、どうもありがとうございます。

クリオの信長も1930~2030でDJやります。

また、大きなバッグ生地をキャンバスにしたライブペインティングも楽しみです。

なぜ水曜日の夜に開催か??
それは自転車屋さんのお休みが多いから、だそうです!笑
週末開催のイベントには自転車屋さんたちは参加できないですからね。

ぜひ仕事終わりに集まってワイワイ盛り上がりましょう!

詳細は以下フライヤー、およびA ブログより

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100%ノンフィクションロードムービー第3弾 「愛しのミドリビンカ」

それは、今から一年ほど前のことだった。

ミドリへ

 今まで、身勝手でがさつなおれを文句ひとつ言わずに支えてくれてありがとう。
 ろくに大事にもしてやれなかったけど、あなたのおかげで幸せな日々を過ごせたことに今さらながら気づきます。
 振り返ると、一緒に色んな町に行ったもんだよね。箱根や富士山に登ったのも今となっては良い思い出です。
 もしミドリに先立たれることがあれば、おれも終わりかなと覚悟していました。

ミドビンカ

 

私事になるが、長年連れ添った愛車ミドリビンカが最期の時を迎えた。

2015/1/16(金)午後、冬の日差しが斜めから頬を射す。

一週間の業務もあと数時間で終わりだ。僕は建物に立てかけていたミドリビンカにまたがり、次のデリバリー先へ向かう。

「カキン」

鋭い感触が尻に響いた。あ、ヒビが入っていたサドルがとうとう割れたかな?と思いつつも、とりあえずそのまま走った。

「チーン!チーン!」

自転車のベルをつけたバイクが目の前を通り過ぎる。そんなことをするのは同業他社のナンチだけだ。髭面で黒ずくめで金のアクセサリーがギラギラしている死神みたいな風貌だが、バイクにはてるてるぼうずをぶら下げているチャーミングなやつだ。

ナンチ

 

彼は僕の自転車によくイタズラをする。ある日同じビルの中で会った時、「パッションさんサドル換えましたね?」と言うので、え?ずっと同じだよ?と答えると、「いや…なんか変わった形のサドルになってましたよ。」と言ってそそくさと去って行く。

なんか怪しいな~と思ってビルから出てみると、

いたずらサドル

 

こんなことになってたり。
またある時は、僕のサドルのヒビ割れにバンソコを貼ってくれていたこともある(笑)、優しい男だ。

そのナンチが過ぎ去ったあと、サドルよりも全然下の方からきしむ音が聞こえる。イヤな予感がして停まって見てみた。すると

BBシェルのラグとシートチューブがつながっていない!!

…………とうとう恐れていた時が来てしまった。
だが意外と冷静だった。
ゆっくりとならまだ走れるな。
残りの業務が完了するまでは添い遂げよう。
立ちこぎをすると、シートチューブがゆらり、ゆらりと、夕陽を浴びてメトロノームのように左右に揺れた。
こいつと一緒に走れるのも今日が最期か。

(正直、ナンチのイタズラか?!と一瞬だが思ってしまったことをここで懺悔したい)

今までの思い出が駆け巡る。

「カラビンカ」で知られる九十九サイクルさん。
僕が語るのもおこがましいし、説明するまでもないだろう。

九十九サイクル

 

そこを紹介してくれたのは、当時オレンジ色のカラビンカピストに乗っていた同僚だった。ズバ抜けて速い上に走ることへの見栄っ張り意識を一番強く持っていたメッセンジャーで、一緒に随分おバカなことをしてきたが「心の師匠」と言える存在である。名はアキラという。

今から10年近く前、折しもピストブームの真っ只中。中古で手に入れたトラックレーサーのフロントフォークにブレーキ穴を空けてもらいに行ったのが最初だった。

ご主人の田辺さんは、帽子を斜めにかぶりメガネを鼻の頭にちょこんと乗せ、にこやかに迎えてくれた。フレーム製作のオーダーを抱えながらも、部品の改造からママチャリのパンク修理までこころよく対応してくれるビルダーさんだ。

ある日なんか近所のおばちゃんが「なんでもいいんですけど、安い自転車ありますか?」とやって来たことがあった。その時お店にいた常連達は一瞬ギョッとしたが、田辺さんは「あぁ、それなら駅の方に西友がありますから、二万円ぐらいであるんじゃないかなあ?」と、ずらしたメガネの奥からやさしい目で答えていた。

一見、どの町にでもあるような自転車屋さんにも見える。

九十九サイクル修理看板

 

開店当時からあるという昭和感あふれる看板が迎え、敷居の高さはまるでない。もっと言うと、散らかっている親戚の家に来たみたいな安心感さえ感じる(スミマセン)。
 これは、ニコラスバイクワークスにも通じる(25チャンニモスミマセン)。

寡黙なスタッフのナガサワさんが真剣な眼差しでママチャリの整備をしているかと思うと、すぐ奥の板金工場の様なスペースでは競輪選手のフレームが作り出されている。
 ここのトラックレーサーを求めて、ピストマニアで知られるエリック・クラプトンがふらりと訪れたという話は有名だ。

ブレーキ穴を空けてもらってから一年ほど経った頃か。
 やはり業務中であったがそのフレームが折れ、修理に持ち込んだ時のことだった。
ダウンチューブが破断してトップチューブにもダメージを与えていた。2本差し替えるなら他のフレームを探した方がいいかもねえ…ということだった。

そうですか……。

しばらく他の作業をされていた田辺さんは、ガッカリしていた僕を不憫に思ったのか、ふいに

「うちで作ってみるかい?」
と声をかけてくださった。

え?……イイイイイインデスカ?!

それまで僕はカラビンカフレームをオーダーしたいと考えたことは無かった。というのも当時からオーダーが出来ないことでも有名だったからだ。競輪選手のオーダーで手いっぱいで、基本的に一般の受注はストップしている状況が今も続いている。

最近知ったのだが、実はクラプトンが訪れた際にも抱えているオーダーを優先するために丁重にお断りしていたらしい(!)。

てっきり、凝ったフルオーダーをして帰国したものとばかり思っていた。彼が所有しているというカラビンカのフレームは、おそらく中古か何か別ルートで手に入れた物だろう。かといって田辺さんは、よく勘違いしたラーメン屋なんかにいる様な高飛車な職人とは違う。どんな有名人だからって特別扱いはせず、フェアにお客さんを大事にする方だからなのだと思う。

とはいっても、天下のエリック・クラプトンである。僕も10代の頃、クリームをよく聴いていた。
「オヤッサン、ほんとにクラプトンて知ってたんすか?!…マイケル・ジャクソンとかよりスゴイんですよ?」と言いたくなる(笑)。

クラプトンが帰りの飛行機の中から眺めたTOKYOは、
きっと涙でにじんでいたに違いない。

それなのにそれなのに、まさかの展開である。

身体の採寸をして頂き、無造作に箱に積まれた色見本のチューブをじっくり眺め…あまりに突然のことにドキドキしながら時間をかけて色を考えた。

色見本チューブ

 

結局、好きな緑色にした。そしてシルバーで漢字ロゴ(篆書)をダウンチューブにのみ入れてもらうことにした。

半年ほどして完成した。カイセイ019という、一般人には剛性と柔らかさのバランスがちょうどいいクロモリのパイプで、丈夫で身体にやさしい。一見、そば屋とか酒屋の実用自転車の様な地味な色だが、朝日があたるとギラリと輝く深緑でとても気に入った。

自転車に求める要素は人それぞれ違って当然で、ファッションとしてやオモチャとして乗るのでもいいとは思う。僕はほとんど趣味では乗らないので、まずは商売道具としての機能性が必要だった。どのビルダーさんのフレームがいいとか合うとかなんて生意気は言えない。それ以前に正直よく分かってもいない。

ただ分かるのは、自分が気に入っていればそれ以上はないし、自分が信頼する人の手によるものなら大丈夫と思えるという事実。特に仕事で命を預けて乗る上で、そういった安心感はとても重要になる。

BBシェルの裏に刻印されているのは製造年月日で、08/08/2とある。6年以上乗ったことになる。どれだけのオーダーをこいつに支えてもらったことか。
業務以外にも、トラックレースやヒルクライム、仮装ライドでも常にこのフレームと一緒だった。

ベロシティ

 

紫陽花とミドビンカ

 

仮装ライドwithミドビンカ

 

間違いなく、僕の一生でこれ以上乗る自転車は無い。

金曜日の午後、最も業務に影響の少ない時を選んでしずかに身代わりになってくれた。
ゆっくり走りながら、「おれも一緒に引退かな…。」との考えがよぎった。

だが同じその時、同僚の火の玉兄弟チカッパがビシバシ走り回っていた。前日、ヒザに痛みを感じ病院に行っていたのに、信じられないオーダーをこなしていた。アキラ以来、僕が一番刺激を受けるメッセンジャーだ。

ちかっぱ

 

他社で誰だか知らない地味なメッセンジャーでも、モリモリ走ってる姿を見かけるとそれだけで胸を打たれる。無条件にかっこいいと感じる。そのインパクトを受け合いたくて僕はこの仕事をやっているんじゃないかと思う。だからこそ続けている間は自分もそうありたいと考えている。逆に、そう思えなくなったらスパッと辞めるつもりだ。

ヒザが壊れるかもしれないのに全力で前に進んでいるやつがいるのに、フレームが折れたからって気持ちも折れてる場合じゃないなと気づかされた。

翌1/17(土)
 電車で九十九サイクルに見てもらいに行った。

だがやはりもう最期だった。

さんざんこき使ってきたわりに、充分もちこたえてくれた。大往生だと言える。
覚悟はしていたつもりだったが、途方に暮れた……。

しばらくして、田辺さんが工房の奥から一本の白いフレームを手にたずさえて現れた。

「これを使うといいよ。」

それは訳あって競輪選手から出戻ってきたフレームだという。
「サイズは合うと思うから使ってよ。」と。

え?……イイイイイインデスカ!!
(デ・ジャ・ヴュとはこのことだ)

「うちにあっても邪魔なだけだから、ゴミが減って助かるよ~。」と、ずらしたメガネの奥で目尻をしわくちゃにして笑った。

それはほとんど新品といえる状態で、真っ白なフレームにロゴはシルバーでKalavinkaと入り、ヘッドバッジは外されていた。チューブは8630Rという固くて反応のいいパイプが使われているプロ仕様であった。

ネットオークションで売り飛ばせばかなりの値段がつきますよ!という僕の失礼な冗談にも、目尻にしわを寄せ笑って流してくれた(恐れ多いにも程がある)。

田辺さんの目分量による見立ての通り、ヘッドチューブは僕のフォークがぴったりそのまま使えるサイズだった。そしてミドリにつけていたイタリアンのヘッドパーツもそのまま使える様にと、あっという間にヘッドチューブの内側を削り、内径を合わせてくれた。
 ナガサワさんにはBBの乗せ換えまでして頂いた。しかも、中に水がたまってグリースが流されていたので、BBシェルの裏に水抜きの穴まで空けてくれた。なんか、歯医者に行ったら歯を磨かれてしまった的な恥ずかしさである。

あまりのことで僕はただアワアワ立ち尽くしている間にも、お二人はスパスパと作業を進めていく。

たまたまお店にいたナカムラさんというお客さんも一緒に作業を見守っていた。田辺さんは、ナカムラさんのことを呼び間違えて「ナガサワさん、」とか話しかけて世間話をしていたが、慣れているのか本当のナガサワさんはそれにこたえず黙々と作業に集中していた。そのコンビネーションがおかしかった。
 田辺さんにはフレームにワックスまでかけて頂き、ナガサワさんは寡黙に迦陵頻伽シールをヘッドチューブに貼ってくださった。

※ついでに、マニアの間でよく語られる「カラビンカトリビア」の真実をいくつか。
 ヘッドバッジのストックが残りわずかで、多くのメーカーと同様にシールに切り替わるという噂。確認してみたところ、選手用のは安全面も考慮してすでにシールになっているそうで、一般のお客さん用には今まで通りのヘッドバッジで製作されるそうだ。

迦陵頻伽バッジ

 

「うちの(田辺さんの奥さん)がメガネをとっかえひっかえして作ってるよ。」と笑う。
あと「七宝焼き」と説明されることがよくあるが、それは間違いだそう。
(まあフレームの性能に何ら変わりはないことだが)

とっくに営業時間は過ぎていた。
            おまけにみかんまで頂いてしまった。

失礼かと思い作業中の写真撮影は控えたが、まさに職人技だった。

一応書き添えておくと、フレームが折れたからといってこんな対応をして頂けることは通常あり得ない。巡り合わせが良かっただけだ。(そしてこんなことは公開するべきではないかもしれないが、工賃すら一切受け取ってもらえなかった)

電車での帰り道。

二つのフレームを両手に抱え、僕は気持ちが落ち着かなかった。大好きだった深緑色のフレームが、パーツが外されて随分と軽くなった姿で傍らにある。もう二度と乗ることはないだろう。まるで遺骨を持って帰る気持ちである。

そして僕の傍らにもうひとつ、とても上品で仕事で使うにはキレイ過ぎるピストバイクが妖しく光っている。

梱包された白フレーム

 

引退もよぎったその翌日にこんなことになるなんて、飛び上がるぐらい嬉しい一方でなにか違和感も感じていた。

長年連れ添った古女房に先立たれて喪に服すつもりでいたのに、すぐに若い愛人が出来てしまったみたいな罪悪感が沸き起こっていた。

青白く輝くフレームはトップチューブも太くなり、塗装はつやつやしている。なんかむっちりピチピチした小娘に見えた。そして使用していた選手のお子さんが貼ったのだろう、ミッフィーのシールまでついているキャピキャピしたやつだ。

シロビンカ…………僕には眩しすぎる。

カラビンカ乗りの友人アケチくんにそのことを話すと、「まあミドリビンカのこどもと思えばいいんじゃないですか?」と気をつかって言ってくれた。

その気持ちはありがたく頂戴したが、よく考えてみると“折れたフレームのこども”って何なんだ?……まったく意味が分からねえ……。

ミドビンカ後ろ姿

 

ミドリビンカで愛用していたリアブレーキ台座は、元同僚のバニヲが開発した“バニーブレーキ”。この世に限定30個しか作られていない。とてもコストがかかっている筈だが、そのうちの一つをスポンサードしてくれた。

一般的なアルミの板で挟むタイプとは全く発想が異なり、シートステイとブリッジの内側から、ロボットがアームを突っ張るようにして固定する。見た目も革命的だが、この台座にはフロント用ブレーキではなく普通のリア用のを取り付けられる厚さになっているのがエライところだ。

田辺さんも毎回「いやぁスゴいねえぇ………えぇ?!(口癖)」と絶賛されていたパーツだ。

シロビンカ後ろ姿

 

シロビンカの後ろ姿。

集合ラグ&つぶしが入ったシートステイというスパルタンな仕様になっている。つまり固くてビシバシ進む。

シートステイの間隔が狭く、これにはバニーブレーキは着けられないので、以前BANKイベントの賞品で頂いていた天婦羅サイクルさんオリジナルの台座を使った。ステンレス(現行商品はアルミ製だそう)の感触が気持ちよく、数種類あるデザインのどれもシンプルでかっこいい。くり抜かれた星形といいミッフィーといい、実にファンシーな仕上がりとなった(笑)。

考えてみると、これらも含め業務で愛用している道具はもらい物ばかりだ。

使い込まれたクロモリのドロップハンドル日東B123は、アキラ師匠から譲り受けた魂のパーツ。
 メッセンジャーバッグは、同僚ジャージ氏提供のUnder11(アンダーイレブン)。 T社のホンマンと街で会うと「形がキレイですよねえ。」といつも言ってくれる。
 携帯ホルダーも、名古屋のwelldone(ウェルダン)イノッチさんに特注したモデルなのだが、結局頂いてしまった。
 道具自体も僕にとってベストな物ばかりだが、スポンサードしてくれた人たちも素敵な男ばかりであることに気づく。

これから、先にフレームが折れるか自分が折れるか分からないが、 まだまだセンチメンタルジャーニーは続くようだ。

木彫りの鳥

 

それから丸一年が経った2016年。年明け二週目の朝のことだった。

僕の腰に激痛が走り、起き上がれなくなった。数日してヨボヨボと病院に行くと、疲労骨折していたことが判明した。
 レントゲン写真を見ると、背骨の一番下のピースと腰骨をつなぐ部分がズレている。フレームでいうと、シートチューブとBBシェルのつなぎ目である。

あ……ミドリビンカと同じ場所ってことか……

医師の説明中だったが、そのことに気づいた僕はうっかり笑ってしまった。

奇しくも、ミドリビンカが折れた日からちょうど一年後の1/16、
うららかな午後のことだった。

こうして、僕とミドリとの甘い日々は終わった。

ナイトミドリビンカ

 

メッセンジャーの世界大会の映像

現在、懐かしの映像として撮り溜まってしまっている2009年のメッセンジャー世界選手権大会(CMWC)を中心に当時の秘蔵映像を編集し直しているのですが、ようやくお台場でのメインレース予選の編集がまとまりました。(シーン9とシーン10)

インタビューでは、クリオシティのメッセンジャーもチラホラ登場しています。

Scenes of MSGR では、2009年のメッセンジャーシーンを一つずつ切り取り、不定期にアップしていっています。

87犬のウンチクと共に、「 A 」の読み物ページでアップしていますので、興味のある方はどうぞ。

 

以下、シーン9のコメントを抜粋。

scene09

 

メッセンジャーのメインレース。

会社を模したチェックポイントがコース上にいくつも散らばっており、そこから荷物をピックアップし、伝票に書かれたチェックポイントまでデ リバリーする。スタート時に渡される大量の伝票と地図を照らし合わせながらデリバリー順をプラン立て、自分のペースでコース上に飛び出していく。

コースは広い会場を街と同じく迷路のようにレイアウトされ、衝突事故を防ぐため基本的には一方通行となっている。
そのため分岐点で誤った方に進んでしまうと後には戻れず、またぐるりと周回しなければならないため、一瞬の判断ミスで大きなタイムロスとなってしまう。

オーダーによって荷物の個数や荷姿、大きさも様々で、30分以内に届ければ問題ないものもあれば、引取りから5分以内に届けなければならない大至急のものも出てきたりする。
立ち寄った所では、できるだけ荷物の引取りとお届けを同時にこなした方が効率は良く、選手たちは走りながら頭をフル回転させながら走り続ける。

予選は全員同じ数のデリバリーをこなすが順番に指定はないため、最も早く終わるデリバリー順を自分で考えて全てのデリバリーを完了させ、ゴールに戻ったタイムを競う。一つ一つには制限時間があるため一つの荷物でもタイムリミットを外してしまうと予選落ちとなってしまう。

自転車のロードレースや数ある自転車競技の中で、メッセンジャーのレースが他のレースと異なるのは、こうした走るだけではない本来の業務に即した勝つためのエッセンスが必要となるところだ。

メインレースはたっぷりと、前編後編に分けてお送りしましょう。

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シーン10のコメント抜粋。

冒頭のインタビューにある通り、お台場フジテレビ前のエリアを借り切って、公道を使ってメッセンジャーのレースを開催できたということに、改めて実行委員会のご苦労を労いたい。
あれからもう7年も経とうとしているが、本当に手作りのイベントの中で最高のイベントだった。

幾つかのインタビューの中で、印象深いコメントを残している人がいる。レース後にピンクの愛車を掃除していたクリオシティのJAG(ジャージ)だ。
彼は言っている。
「自転車をちゃんと愛してあげれば、その分自転車は応えてくれる」
彼はこの後のメインレース決勝でも、その言葉通りとんでもないパフォーマンスを発揮する。
また、10年以上も走り続けているキャリアの中で、一度も交通事故に遭っていないという事実も、愛されている自転車からのお返しということなのかもしれない。
参加者達から時折聞こえる意義深い言葉もまた、興味深い。

今回は、通常のメインレースと同時にカーゴレースの予選も行われた。
カーゴレースとは、大きな荷物を運べるタイプの自転車で競うもの。
カーゴバイクには大きく分けて2タイプあり、一つはハンドルより前に荷台があるタイプ。
もう一つはサドルよりも後ろに積むタイプ。中にはアタッチメントで本体に固定してキャリアを引っ張るトレーラータイプのものもある。
海外のメッセンジャーの中には、カーゴデリバリーを主な仕事にしている人も多く、彼らはCMWCでのカーゴレースを特に楽しみにしている。

そして、予選をほぼノーミスで通過した上位者たちによる翌日の決勝レースへと続く。

映像はこちら

ひのりごと 46

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今、スキーに夢中だ。
先日、仕事の関係上、スキーについて学ぶ機会があった。スキーの中でも山スキー、更にはテレマークというスキーの話にぐっと惹きつけられてしまった。私はスキーに馴染みがない。三十数年一度も経験することなく過ごしてきた。そんな私も、せっかく北国に来たのだからスキーはやりたいと思っていた矢先の研修だった。
スキーの始まりから今に至るまでの話、テレマークの成り立ち、テレマーカーの振る舞いを、”好き”という気持ちを根底に語られる研修は、仕事でありながらドキドキした。
スキー場でザックを背負って滑るテレマーカーは、お互い妙な親近感が湧くらしい。
それって、街で大きなバッグを背負った者同士が抱く親近感と似ている…。もう、この時点でぐぐっときてしまった。
マイノリティ(少数派)、カウンターカルチャー、メッセンジャーカルチャー。固定ギアの自転車のブームがピークにあった頃はそんな言葉にも、天邪鬼な気持ちで”なんだかなぁ”と思っていた。でもそんな時代もとうに過ぎて、”自転車”をそれぞれの嗜好でより自由に楽しむ人が周りに増え、私も程よく歳を重ね、そういうことの良さを素直に感じられるようになってきた。やっと。

敢えて身体に負荷のかかる道具で移動する、荷物を運ぶ、それを仕事にする。それを仕事に選ぶ時点である種の変わり者。物好きだ。
そんなところから始まる共有意識、共感は同じ都市を走る同業者、地方都市、そして世界に広がっていた。
知らない街に行って、同業者を見かけてなんの迷いもなく話しかけられるってなかなかないこと。話しかけるというより、思わず声を発する感覚。
そんな世界がスキーの中にあるということが驚きだった。
やってみたい!
とはいっても、知っている人は分かると思うが、テレマークはとても難しい。踵がフリーになるビンディングで斜面を滑り降りるのだ。(私が今できる最大限の説明。)スキー未経験の私には絶対に無理。絶対。
ということで、ゲレンデでアルペンスキーの練習から始めることにした。道具は周りの心優しい人が使っていないものを提供してくれた。この土地の人達はこの土地を楽しもうという気持ちにとても優しくて親切。
ゲレンデに5回行った。成長のペースは予想通り。でも楽しくてしょうがない。ゲレンデを滑る感覚を身体に残しながら運転する帰路。頭の中はドリフト状態。で、安全運転。メッセンジャーを始めたばかりの頃はその日一日の仕事をもう一度頭の中で繰り返しながら帰っていた。あの瞬間の荷物のピックからのあそこでのパス。良い瞬間を思い出しながら走る帰り道。メッセンジャーはナルシストな職業。

今の目標は来シーズン中に夏に歩いた山にスキーで入ること。それができたら、テレマークの練習の始まり、かな。
できるか分からないけど、とにかくやってみたいという気持ちもメッセンジャーを始めた時と一緒。
恋に落ちやすい性分は変わらない。

そんな中で最近はっとするような出来事があったのだけど、それはまたの機会に。
これからメッセンジャーバッグにスキーのウェアと練習後の温泉セット詰め込んで明日の準備だ。

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